近年、内視鏡技術の発達により、低侵襲な内視鏡手術が各臓器で普及しています。昨今では、鼓室形成術も内視鏡下でおこなわれるようになりました。現在この内視鏡下耳科手術(TEES;transcanal endoscopic ear surgery)は、山形大学や慶應義塾大学などをはじめとした大学病院などで導入され始めています。
内視鏡下耳科手術の利点は、外耳道の穴から内視鏡を入れて手術するので傷口はほとんど目立たず、また耳の後ろの骨を大きく削る必要もないため、きわめて低侵襲であること、したがって術後に傷の管理のために入院する必要はないこと(安全な挿管全身麻酔のためには入院が必要)です。当院では院長の出身医局である慶應義塾大学耳鼻咽喉科より、米国ハーバード大学で学んできた、内視鏡下耳科手術を専門としている医師を招聘し、さらに当院独自の麻酔法をプラスして、日帰り全身麻酔での内視鏡下耳科手術を可能にしました。
現在日本国内で日帰り全身麻酔での耳内視鏡手術をおこなっている施設はほとんどありません。一般的に、慢性中耳炎の患者様はほとんどが高齢の方であり、高齢の方に全身麻酔をかけて当日中に帰宅してもらうのは非常にリスクが高いからです。
「日帰りのための全静脈麻酔法 TIVA」で述べたとおり、当院の全静脈麻酔、TIVA(ティーヴァ)は心臓と肺への負担を最小限にしておこなっています。負担の少ない手術法と負担の少ない麻酔法がコラボレーションし、総合的低侵襲の日帰り耳内視鏡手術が実現しています。